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2016年10月26日

北海道新聞10月26日朝刊「朝の食卓」



かかってますよ - さとう努
   ◇
 北海道は温泉地の数では日本一。しかし湧出量や源泉の数では大分県には及ばない。しかも別府だけで日本の約1割もの源泉が集まっているそうだから、まさに温泉のワンダーランド。
 その別府には、88の温泉施設をめぐってスタンプを集めると「名人」の称号が与えられる「別府八湯温泉道」というのがある。御遍路ならぬ湯遍路だ。88とは気の遠くなる数字だが、温泉が密集するエリアの特徴から、短時間でも数はこなせるので、週末に関東や関西などから通い、「名人」を目指す人も少なくない。この取り組みの中に、北海道でも生かせるヒントがないものか。そんな思いを抱きつつ、6月に別府を訪れた。
 温泉道の湯めぐり中に、とある共同湯に入った時のこと。フロントの女性に入浴料を支払い、奥にある台でスタンプ帳にスタンプを押そうとしていたところ、背中越しに、私の次にやってきた地元のおじいさんの声が聞こえた。いきなり何やら困っている様子。フロントの女性が親しげな様子で「どうかされました?」 と尋ねると、おじいさんは「タオルを忘れたんじゃ!」と答えた。すると間を置かずに女性がこう言った。「かかってますよ」と。
 振り向くとそこには、首にかかったタオルの端をしっかりと両手で握りしめ、すでに風呂上がりかのような真っ赤な顔ではにかむおじいさんの姿があった。今にも笑ってしまいそうな光景だったが、そのやりとりがほほ笑ましく、身近に共同湯があることをうらやましく思った。
 今日は26日、風呂の日だ。温泉に行ってほっこりしよう。(温泉ソムリエ・ニセコ)  

Posted by トム at 07:00Comments(0)朝の食卓

2016年09月19日

北海道新聞9月19日朝刊「朝の食卓

熱視線 - さとう努
   ◇
 温泉ソムリエの認定セミナーで初めて講師をしたのが、2年前の4月に行われたニセコでのセミナー。その後も講師ができる機会を探していた私は、その3カ月後の7月、神戸のセミナーで話す機会をいただくことになった。せっかく関西まで行くのだからと、セミナーの前後に和歌山と兵庫の湯めぐりを予定に組んだ。
 日本三大美人の湯の「龍神温泉」。世界遺産の「湯の峰温泉」。日本三古湯の「白浜温泉」に「有馬温泉」と、連日の湯めぐり。セミナー前日の大阪のホテルも、翌日泊まった神戸のホテルも温泉。結局、この旅で15湯ほどをめぐり、温泉ネタもたっぷり仕入れた。
 セミナー当日、会場へ向かおうと地下鉄の駅へ行くと、今まさに電車が発車するところ。少々慌てて飛び乗る形になった。車両は空いていてゆったりと座れた。神戸は美人が多いのだなと乗客を見て感じたが、同時に女性たちからの熱い視線も感じていた。理由は降りるときに気がついた。そこは「女性専用車両」だったのだ。
 女性たちにはなんとも間抜けな旅行者と目に映ったことだろう。通常なら赤面する場面だが、恥ずかしい思いよりも先に、「この旅で一番のネタだ!」と思えてしまう、前向きな自分の性格に驚くばかり。もっとも30分も痛い視線を感じているのに、最後まで気づかずに座っていた自分にも驚きですが。(温泉ソムリエ・ニセコ)  

Posted by トム at 07:00Comments(0)朝の食卓

2016年08月13日

北海道新聞8月13日朝刊「朝の食卓」



ふぉし、よっちゅです - さとう努
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 3年ほど前に、温泉ソムリエ協会の認定セミナー内で「講師」ができる資格の存在を知った。それまでも講演などで温泉の話をする機会は何度かあったが、ちょうど地域FMパーソナリティーとしての活動も始まったころで、人前で話し慣れすることに飢えていた私は、スキルアップを兼ね、講師の資格に挑戦することにした。
 講師になるには家元(協会の代表)の前で講演テストを行い合格する必要があるが、「トムさん(私の愛称)なら楽しい講座になりそう」と、無事に合格して講師の資格をいただいた。ただ、北海道ではセミナーがなく、講師をする機会がない。そこで、北海道にも家元を招いてセミナーを開いてもらったり、全国のセミナー開催地に自ら足を運んだりして場数を踏んでいった。
 そして6月、大分県の別府温泉で講師を務めてニセコに戻った私のところへ、家元から「師範にならない?」と連絡が来た。講師はセミナーの中で講師はできても、セミナーの開催はできない。それが師範となれば、家元がいなくてもセミナーを主催でき、認定までのすべてを行える。
 かくして全国で4人目、道内ではもちろん初の師範(四つ星温泉ソムリエ)となりました。今後、自身での開催はもちろん、認定セミナーをやってほしいと声がかかれば、道内各地に足を運ぶことにもなりそうで、身の引き締まる思い。でも確か私の本業は、カレー屋であり宿屋であったはずなのだが…。(温泉ソムリエ・ニセコ)
  

Posted by トム at 07:00Comments(0)朝の食卓

2016年07月07日

北海道新聞7月7日朝刊「朝の食卓」



休息の湯 - さとう努
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 5月に新潟で行われた温泉ソムリエのイベントに参加した。車に荷物を積み込み、行きは小樽からフェリーで新潟入り。イベント後は名湯めぐりをしながら北上し、青森からフェリーで函館へ渡って帰るという約一週間の旅。計画の段階から子供のようにワクワクした。
 新潟の温泉はもちろん、蔵王、鳴子、乳頭、玉川、酸ヶ湯、蔦、谷地温泉といった有名どころにも立ち寄った。とりわけ東北は歴史ある名湯が多く、酸性泉や硫黄泉など、名湯ゆえ泉質的に成分が濃かったり、効き目が強かったりするところも少なくない。秋田の玉川温泉に至っては日本一の酸性度を誇り、少し浸かっただけで肌全体がピリピリするほど。名湯だからと濃い泉質のところばかり回っていると、思いのほか体力を奪われ、体調を崩すこともある。
 そんな名湯めぐりの途中に泊まった宿が、秋田県八幡平の麓にある銭川温泉。静かな森の中にひっそりと佇む、川の畔の一軒宿だ。無色透明なアルカリ性の美肌湯は、単純温泉で、成分的には薄いものの、強い泉質をめぐったあとの疲れた体にはとても優しく、湯治客とのフレンドリーな会話もあって、身も心もすっかり癒やされた。
 まさに休息の湯。ここに泊まらなかったら疲労が抜けず、その後の湯めぐりにも影響したことだろう。他の温泉も素晴らしかったが、結局この時の休息感がこの旅で一番印象に残り、銭川温泉は私にとって忘れられない名湯の一つとなった。(温泉ソムリエ・ニセコ)
  

Posted by トム at 07:00Comments(0)朝の食卓