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2016年05月31日

北海道新聞5月31日朝刊「朝の食卓」



1万人達成 - さとう努
   ◇
 4月16日に温泉ソムリエ認定セミナーを開催した。一昨年のニセコ、昨年の滝川に続き、北海道では3度目の開催となる今回は、札幌で行った。ニセコでは56人、滝川では70人、そして今回は60人の温泉ソムリエが誕生した。
 温泉ソムリエの制度は、2002年に新潟県妙高市の赤倉温泉で発足。当初は観光客に正しく温泉の案内をするのが目的で、主に赤倉の温泉施設の方を対象としたものだったそうだが、05年より一般の温泉ファンにも門戸を広げ、現在は全国各地で認定セミナーが開催されている。私は10年に東京でのセミナーを受講。その時は全国にまだ2千人ほどだった認定者は、今年3月に大阪で開催されたセミナーで1万人を達成した。
 認定者同士の交流が盛んなのも温泉ソムリエの特徴の一つ。会員制交流サイト(SNS)で情報交換を行ったり、一緒に湯めぐりしたりと、認定後も仲間と交流を楽しむ人は少なくない。温泉ソムリエが縁となり結婚した人もいる。4月の札幌セミナー後にもオフ会と称する交流会を開催したが、道内の認定者のみならず、全国から多くの仲間が集い大盛況だった。
 札幌のセミナーであわよくば1万人達成となるようなら、オフ会の抽選会ではその記念として、私と行く「米国イエローストン1週間の旅」くらいの豪華な賞品を出さないとと思っていたが、杞憂(きゆう)に終わった。そもそもそんな予算などどこにもなかったわけですが。(温泉ソムリエ・ニセコ)  

Posted by トム at 07:00Comments(0)朝の食卓

2016年04月24日

北海道新聞4月24日朝刊「朝の食卓」



親切心 - さとう努
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 20代のころ、夏休みを利用して北海道を旅していた私は、道東にトド肉を食べられる店があることを知り、寄ってみることにした。しかし、近くまで行っても店が見つからず、そばにいた地元のおばあさんに尋ねてみた。すると、「あっちにも魚のおいしいお店があるよ」と言って、なぜか目当ての店は教えずに去ってしまった。
 おばあさんにしてみれば、その地を訪れる多くの観光客と同じように、トド肉よりも海産物を勧めた方が、喜ぶと思ったのだろうか。親切心ならありがたいが、どうしてもトド肉が食べてみたかった私は、その後も街をさまよい、なんとか目的の店を見つけて入店した。店内は意外なほどにぎわっていた。カウンター席に座り、トド肉の鉄板焼きを注文。味は昔懐かしい鯨肉のようで、まんざらでもない。会計時にトド肉を食べた証明書をもらい、店を見つけた達成感と、トド肉を食べた満足感とともに店を出た。
 数年が経ち、移住して旅人を迎える側になった。温泉の案内をする時など、善かれと思いつつ自分の好みや価値観だけで案内していないか、相手に考えたり選んだりする余地を与えているだろうかと、ふと不安になることがある。相手の求めるものとのバランスも大切だからだ。そんな時、あのおばあさんとのやりとりを思い出しては考えさせられる。
 正解が見つからないこともある。ただいつまでも考えていると、夜な夜なおばあさんが枕元に現れそうで、ますます不安になるのである。(温泉ソムリエ・ニセコ)
  

Posted by トム at 07:00Comments(0)朝の食卓

2016年03月18日

北海道新聞3月18日朝刊「朝の食卓」




雪庇の湯 - さとう努
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 ここ最近、温泉施設の廃業や休業、あるいは経営が変わるといった話題を耳にする。建物の老朽化や後継者の問題など、それぞれ事情はさまざまだが、名湯と呼ばれる人気ある温泉であっても、営業をやめるところは少なくない。
 昨年12月の北海道新聞に、奥ニセコにある老舗の温泉施設2軒が、3月いっぱいで営業を終了するとの記事が載っていた。どちらの施設にも混浴の露天風呂があり、ニセコに移り住んだばかりのころ、まだ幼かった娘を連れて入りに行って以来、お客さんをはじめ、友人の作家さんやモデルさん、温泉仲間を連れて入りに行くこともあった、とても思い出深い温泉である。
 そのうちの1軒は、この時期、混浴の露天風呂の周りに積もりに積もった雪が大きな雪庇(せっぴ)となって成長し、露天風呂を覆うかのようにせり出すことでも知られ、その雪庇の下で湯あみを楽しむ人たちの姿が、毎年のようにメディアなどでも取り上げられ、話題になっている。道内だけでなく全国にもファンが多く、惜しむ人が多いと思われるだけに、営業終了はきっと苦渋の決断だったことだろう。記事によれば売却先を探しているとのことだったが、どうなっただろうか。
 あの、入浴後の肌が若返ったかのようにしっとりとする優しいお湯には、しばらく漬かることができないのかもしれない。巨大な雪庇は見頃だろうか。3月末の営業終了までに、もう一度あの雪庇の下で湯あみを楽しみたい。(温泉ソムリエ・ニセコ)
  

Posted by トム at 07:00Comments(0)朝の食卓

2016年02月10日

北海道新聞2月10日朝刊「朝の食卓」



湯めぐり美人 - さとう努
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 大学を出て入った会社は車の部品を作る町工場。若い社員が多く風通しの良い社風で、冬は週末になると、誰かしら声をかけては夜な夜な車で北関東 や上信越のスキー場に向かった。スキーウェアや板も毎年流行に合わせて買い替えるバブル景気に浮かれていた時代だった。
 ある時、いつものように誘いあい、車数台に分乗して日帰りスキーに出かけた。私の車のメンバーには、同じ部署で働く、社内でも美人と評判の若い 女性がいた。スキー場までの約2時間、車内で談笑するうちに、なんとなく趣味の話題になった。ドライブや食べ歩き、音楽鑑賞といった言葉が出た が、その女性は「湯めぐり」と答えた。
 「え? 温泉めぐり?」と驚いて返事をした。当時、私自身もスキーの帰りなどに温泉に寄ることはあっても、汗を流し、疲れを癒やすのが目的で、 わざわざ湯めぐりのために出かけることがなかった。湯めぐりと聞いて、まっ先に「湯治」のイメージが浮かんでしまい、まだハタチそこそこの女性と 温泉との関係が、ちょっと意外に思えたのだ。
 しかし「美人の湯」などと呼ばれる温泉があるように、美肌効果がある温泉は少なくない。恥ずかしながら、当時の私はまだそんなことはよくわかっ てなかったのだ。おそらく彼女はそのことを知っていたのだろう。なるほど、彼女が美人で評判だっただけのことはあるなと、今になって思うのである。(温泉ソムリエ・ニセコ)  

Posted by トム at 07:00Comments(0)朝の食卓